前代未聞のゲームは民衆から生まれ、そして伝わっていく。
【ジーベンバッテン】
昨今作られているアナログゲームは海外のデザイナーや国内の同人ゲームデザイナーの様々なアイディアによって日々新しいアナログゲームたちが作られています。
もしかしたらアイディアもはや出し尽くしされてしまったのではないかと思えてくるぐらいです。
でもですね、実はそうでもないんです。
世界各国様々な伝統ゲームを調べていると、今作られたゲームでさえも存在しないようなアイディアを持ったゲームがあるんですよね。こんな思いつかない奇抜なアイディアを思いつくのはゲーム作りを専門としてきたゲームデザイナーなどではありません。他に仕事をしている合間にゲームを遊び、長い時間をかけて改良してきた数えきれない名もなき民衆なんです。
最近誰しもがアナログゲームを遊べない状況でこんなことがありました。
東京で伝統トランプゲームを古い順で遊んでいこうという試みを行っているトランプ勉強会という会があります。
この勉強会において【ブリントバッテン】が遊ばれ、このゲームの面白さが再発掘されました。
そして遊びやすく改良されたあるゲームがtwitter上の一部の好事家の間で話題になりました。
これが今回紹介する【ジーベンバッテン】です。
バッテンというゲームの簡単な説明をしましょう。
バッテンは南ドイツのバーバリア地方やオーストリア・チロル地方や南チロル地方でプレイされているトリックテイクで、5トリックをかけて競い合うゲームです。
南チロルとオーストラリアのシュタイアーマルクで遊ばれているゲームバッテンの種類の一つであるこの【ブリントバッテン】は手札5枚の15点先取です。これを改良して手札7枚の7点先取にして、
ドイツ語で7を意味する「ジーベン」のバッテンということでと【ジーベンバッテン】と名付けられました。
【ブリントバッテン】から【ジーベンバッテン】という風に、伝統ゲームを遊び学ぶことで新しいゲームを作るアイディアをを生み出すという行為は非常に重要なのではと思っていますね。
このゲームが紹介されると【ジーベンバッテン】 の独特のルールが話題になり「自分の遊んだトリテの中ではベストに入る」と言わしめるほどの絶賛の声が上がりました。
ではこの【ジーベンバッテン】は何が独特なのか?
これはルールの紹介しながらお話ししようかと。
【ジーベンバッテン】は切り札がある程度複雑に絡んでくるので、
そこらへんの説明を文章を割いて説明していこうと思います。
■目的
対面同士でペアを組み、相手チームより多くトリックを取ることを競います。
■人数
4人限定になります
■用意するもの
トランプ:各スート2〜6までとジョーカーを抜いた32枚。
スコアシート:勝点を記録出来るチップでもいいです。
メモ帳:絶対に必要という訳ではありませんが、このゲームは切り札ランクが覚えづらいので記録するために用意したほうがいいと思います
■切り札、ランク
各スートのランクは以下の通りです
A>K>Q>J>10>9>8>7
ここはいつも通り。
今度はこの切り札になりますが話が少し長くなります。
このゲームでは「特定ランク」「切り札スート」をそれぞれ別のプレーヤーが決定して以下の名称の切り札が決まります。
ここでは切り札の名称を説明するのですが「特定ランク」がJ、「切り札スート」が♦️で決まった場合で説明していきましょう。
✳︎レヒテ
「特定ランク」と「切り札スート」の両方に該当する1枚のカードはレヒテと呼びます。
例の場合ならレヒテは♦️Jがレヒテとなります
✳︎グアテ
レヒテよりランクの強さが一つ強いランクの1枚のカードはグアテと呼ばれます。
例の場合なら♦️Qがグアテになります
例外としてレヒテのランクの場合がAの場合はグアテは7になります例えばレヒテが♧Aだった場合、グアテが♧7になります。
グアテはレヒテよりも強く、切り札ランクの中では最強のカードになります。
✳︎リンケン
「特定ランク」に該当はするが「切り札スート」に該当しない(つまりレヒテ以外の)カード3枚をリンケンと呼びます。
例の場合ですと❤️J、♣️J、♠️Jがリンケンになります。
このリンケンはグアテ、レヒテに次いで強いカードなのですが、切り札スートではないです。
そこは注意してください。
このリンケン3枚同士はランクは同じ強さです。1トリックでリンケンが2枚同時に出されることがありますが、その時は一番先に出されたリンケンが一番強いリンケンとなります。
✳︎切り札スート
グアテ、レヒテ以外の「切り札スート」に該当するカードを呼び、1番弱い切り札群になります。
お互いのランクは各スートのランクと同じになります。
まとめると
グアテ>レヒテ>リンケン3枚> (以降「切り札スート」)A>K>Q>J>10>9>8>7
と、なります。
■ディール、切り札決め
まず、カードを1枚づつ引いて一番高いランクのカードを引いたプレーヤがディーラーとなります。
また、ディーラーの左隣のプレーヤーはこのゲームでは「キャプテン」と呼ばれます。
ディーラーは各プレーヤーに7枚ずつ配ります。
4枚余るが、これは扇型に伏せたままこのラウンドでは使いません。
このゲームではディーラー、キャプテン、その他のプレーヤー2名と分かれます。
お互いの手札を確認したのち、切り札決めに入ります。
まずキャプテンが手札から1枚のカードを1枚選ます。この選んだカードのランクが「特定ランク」になります。
そしたらキャプテンはディーラーだけにそのカードを見せます。
「特定ランク」をキャプテンとディーラーが確認できたら
今度はディーラーが手札からカードを1枚選びます
このカードのスートが「切り札スート」になります。
ディーラーはこのカードをキャプテンだけに見せます。
キャプテンとディーラーは「特定ランク」と「切り札スート」をよく覚えておくと言うことなのですがトリックテイクに慣れた人でも絶対忘れやすいと言うことらしいのでメモしてお互いだけが見えるところにおくと良いです。
と言うか私なら絶対そうする!
このときキャプテンとディーラー以外の2人には「特定ランク」と「切り札スート」わからないようにと言うかプレイ終了するまで絶対言ってはいけません。メモも見せちゃダメよ。
これにより、切り札がなんであるか判っているプレーヤーと判ってないプレーヤーがお互いペアで組んでいる状況になっています。
この切り札が全く知られていないという「切り札秘匿」というのがゲームの大きな特徴になります。
■プレイ
キャプテンが最初のリードプレイヤーを行い、それ以降のプレーヤーはメイフォローで行います。何出してもフリーダム!
ところがキャプテンとディーラーは完全にフリーダム、ではありません。
キャプテンとディーラーは、切り札がリードで出された場合のみ、切り札スートをマストフォローで出さなければいけない、つまり切り札マストフォローが発生するのです。
これはキャプテンとディーラー以外の2人のプレーヤーが切り札リードをしてもキャプテンとディーラーは切り札フォローをしなければいけません。
ただし、フォロー時に切り札スートがない場合は何を出しても構いません。
ここで厄介になってくるのはリンケンの扱いです。
「リンケンは切り札スートではない」という一文があるので切り札マストフォロー時はリンケンを出してはいけないんだろうなと思うのですが、リンケンは切り札フォロー時は例外として切り札代理としては出すことができます。ただし、これは「リンケンは切り札スートではないためを必ず出さなくてはならないということではない」という意味合いも含まれています。例えば、手札に切り札がなくてリンケンがあったとします。そしたらリンケンは切り札スートではないのでリンケンを出してもいいし、リンケンを出さずに他のカードをディスカードしても構わないということにもなります。
そしてリンケンについてもう一つ。リードでリンケンがプレイされた場合ですが「リンケンは切り札スートではない」ため、切り札ならびにリンケンを出す必要はないことも注意してください。
では改めて今までの説明をまとめると。
●切り札以外のスートののリード時はメイフォローのトリックテイクを行う。
●切り札スートリード時はディーラーとキャプテンのみ以下のフォローが発生する。
・切り札を持っているときは切り札かリンケンを出さなければいけない
・切り札スートを持っていないときは何を出しても構わない
●リンケンは切り札スートではない。よってリンケンをリードしてもフォローは発生しない。また、切り札フォロー発生時に切り札スートが無くリンケンがあったとしてもリンケンを出さなくて良い。
これだけのことなんですが、長々とした説明になってしまった。
だけどこのルールを熟知してもらうことが本当に重要なのでここまで割いて説明しました。
全員出し終わった後、キャプテンとディーラーはこのトリックの勝者を示します。
どちらが示すかは2人でお互いに確認し。その時々でで決めて行くのが良いでしょう。
トリックの勝者の判断基準は以下の通りになります。
・ 切り札もリンケンも出ていない場合は、リードプレイヤーが出したスートで一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
・切り札やリンケンが出ている場合は、一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
・ 切り札が1枚も出ておらずリンケンが出ている場合は、リンケンを出したプレイヤーが勝ちます。リンケンが2枚以上出ている場合は、先出し勝ちとなります。
トリックに勝ったプレイヤーは、出ている札を裏向きにして自分の脇に集め、リードを行います。
こうして7トリック行います。
■得点
各ペアごとに何トリック勝ったか確認し、
多くトリックを取ったペアが以下の得点を得ます
4トリック・・・・・・1点
5トリック・・・・・・2点
6トリック・・・・・・3点
7トリック・・・・・・5点
その後左隣にディラーを移して次のラウンドになります。
以降を繰り返して先に7点以上取ったペアの勝ちになります。
このゲームの斬新な点は何と言っても切り札秘匿システムでしょう。
これに近いのは思いつくのは【ヴァス・シュテッヒ】と言うトリックテイキングがあり
それの手札を作るパートが近いです。
バス・シュテッヒは手札を作成するパートと作った手札をプレイするパートと分かれています。
この手札を作るパートは各プレーヤーが1枚づつカードを取っていくのですが、
この時は親だけしかが切り札を知りません。そこで1枚づつとったあと、
親はこの時取ったカードでトリックを行った時に誰が勝つかを示します
これにより他のプレーヤーは切り札はなんであるか推理して手札を作っていきます。
でも、これトリックやっているわけじゃないですから、切り札秘匿のシステムは私が知る限りブリントバッテン以外には存在はしないと思います。
そして実際遊んでみると本当に伝統ゲーム的なトリテを遊んでいる感じがしっかりするんですよね。
さらにこのゲームのいいスパイスに成っているのがリンケンの存在であると思います。
リンケンは切り札スートではないのである程度自由に出すことができ流と言う微妙な立ち位置があるので、相手が切り札スートを推測できてもリンケンによって混乱させることもできます。
またリンケンは普通に強いカードであるために、これを多く持っていればパワープレイによって勝つことも可能になります。
実際遊んでみたのですが、2点取るのでもなかなかに至難の技で1点を取り合う1進1退の攻防になってかなり時間がかかった印象がありました。
ごいたのようなパートナーに手札と切り札がすぐに伝えられるようなテクニックがあれば相手と大きく点差を開くことができるゲームではあると思います。
かなりトリックテイクになれたプレーヤ同士で遊ぶ必要があるのですが、変則的なトリックテイクのを好むゲーマーも喜ぶ内容なのではないでしょうか。
ジーベンバッテンの元になったブリントバッテンですが、このゲームでしかないルールが多く存在してまた違った味わいのゲームになっているので後に改めて記事に書こうとも思います。
ぜひご期待してください。
この【ジーベンバッテン】についてのデザイナーズノートが書かれていますので紹介します。
kusabazyun.banjoyugi.net
後もう一つ、
今回からこのゲームの遊び方を簡潔のまとめて掲載してみる試みを行ってみました。
これを文体なりをアレンジしてプリントしたものをゲームを遊ぶ前に渡しとけば、ゲームがよりスムーズに進行できるのではないかと思います。
【ジーベンバッテン】 各スート2〜6まで抜いた32枚
向かい同士で組むペア戦。7点先に取ろう!!!
強さ
切り札(1>2>3>4>5)
1:グアテ…レヒテの一つ上のランクの切り札スート。
2:レヒテ…切り札スートと特定ランクのカード。
3:リンケン…特定ランクのカード(3枚)切り札スートではない。リンケン同士は先出し勝ち。
4:切り札スートA>K>Q>J>10>9>8>7
5;その他のスートA>K>Q>J>10>9>8>7
流れ;各自7枚づつ配る。残りは使わない。
キャプテン(ディーラの左隣のプレーヤー)は、ディーラーに手札を1枚見せ特定ランク決定。
次にディーラーがキャプテンに手札を1枚見せ切り札スート決定。他の2人に切り札は教えない。
キャプテンよりリードを行う。
手番
切り札以外のリードではメイフォローのトリックテイクを行う。
切り札スートリード時、ディーラー・キャプテン限定のマストフォローが発生。ただしリンケンリード時は発生しない。
・切り札を持っていれば、切り札を出す。リンケンでも可。
・切り札スートを持っていないときは何でも出せる
キャプテン・リーダーがトリックの勝者を示す。
得点
4トリック:1点 5トリック:2点 6トリック:3点 7トリック:5点